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鳥取県の福祉教育のあゆみ

鳥取県の福祉教育のあゆみ

1 鳥取県における福祉教育の沿革

(1)学校における「福祉教育」

わが国における「福祉教育」の歴史は古く、第2次世界大戦終戦直後に、人間性の信頼回復をめざし、子どもたちに社会福祉を通した教育をという趣旨から始まりました。その後、昭和52(1997)年に国庫補助事業による「学童・生徒のボランティア活動普及事業」が始まり、学校における本格的な取組みが全国各地で展開されるようになりました。
鳥取県においては、昭和28(1953)年の八頭郡社協による「社会福祉事業普及校設置事業」を先駆けに、昭和48(1973)年の米子市「福祉教育モデル指定事業」以降、境港市、東伯町、倉吉市でも福祉教育の取組みが始まりました。
昭和52年からは、鳥取県社会福祉協議会(以下、県社協)が、「福祉の教育研究協力校」の指定を始め、その後、県下の市町村へ急速に指定事業が拡大、昭和55(1980)年からは、高等学校の指定も始まり、市町村では幼稚園、保育所、特別支援学校(養護学校)にも取組みが広がっていきました。
このような取組みの中、福祉教育は教育行政でも注目されることとなり、平成元(1989)年からは、県教育委員会の学校教育の努力点に位置付けられます。その後、平成14(2002)年に学習指導要領が改訂(高校は平成15年度)され、新たに創設された「総合的な学習の時間」の内容に「福祉」が盛り込まれたことから、ボランティア活動を含む豊かな社会体験、自然体験活動を、学校教育・社会教育を通じ、学校・家庭・地域が連携して取組むことが推進されています。
現在、福祉教育指定校の事業は、県内19市町村全てで取組まれており、昭和52年からの学校指定の累計は、小・中・高校で100%の指定率となっています。
 

(2)地域における「福祉教育」
県社協は、昭和60(1985)年から「ボランティア体験事業」を始め、それまで学校を中心に取り組まれてきた福祉教育から、県内に住む高校生以上の方を対象とし、夏休みの期間中に社会福祉施設等での体験活動を行うプログラムへと領域を拡大しました。また、市町村社協でも自主事業として、主に中学生以下の児童を対象とした体験学習プログラムが実施され、平成20(2008)年度には、174のプログラムに1,198人の参加がありました。
加えて、県社協では、近年、いじめや虐待など子どもたちを取り巻く環境の変化や住民同士の人間関係の希薄化が問題視され、地域の中で社会性を育て“ともに生きる”ことを考える「地域を基盤とした福祉教育」の取組みに関心が高まってきたことを受け、地域生活者として福祉理解を広げ、地域の福祉・生活課題を届けることで学校や地域における福祉教育の場に参画する学習活動の支援者を養成するため、平成16(2004)年度から「福祉学習サポーター講座」を実施し、平成20年度までに延べ121人のサポーターを養成しています。
 

(3)指導者等に向けた取組み
昭和52年から実施している「福祉の教育研究協力校事業」とともに「福祉教育実践校研究協議会」を開催し、昭和61(1986)年からは「福祉教育研究セミナー」として、社協、学校、福祉施設、地域住民など福祉教育関係者を対象に、福祉教育の推進に向け、関係者の共通理解、共同実践の基盤を提供することを目的にセミナーを開催しています。
また、平成16~19年度にかけて、福祉教育読本「ともに生きる」(小学生向け、中学生向け、指導者向け)を作成し、授業の展開例やワークといった実践を行う上での具体的なヒントをまとめ、地域の福祉課題に基づいた福祉教育の実践が、さらに豊かなものとなるよう推進を図っているところです。
 

2 これからの福祉教育~地域社会全体で取り組む福祉教育~

福祉教育は、学校教育だけでなく社会教育の領域も含め、そして対象もすべての年齢段階に向けて実施することが必要です。また、福祉教育は、幼いころから家庭・学校・地域などで体験的に学んだことを通して培われるものであり、その育成には保育園、幼稚園、学校のみならず、社会福祉協議会、公民館、福祉施設、地域住民等、地域社会全体として取り組むことが求められています。この地域全体で取組む福祉教育の実現に向けては、従来の学校中心で行う福祉教育からの転換が必要であり、今後はさらに、地域社会の位置づけを明確化した上で、地域全体で福祉教育の底上げを推進していくことが求められます。

 

福祉教育.png

 

上図は、「鳥取県における今後の福祉教育の推進体制イメージ」です。乳幼児期から学齢期、そして地域住民としてのすべてのライフステージにわたり、福祉教育が行われていくことを求めています。その柱としては、発達段階に応じて学習課題が設定され、一生涯にわたり福祉教育による学習を積み上げることです。
地域社会には、「市町村社会福祉協議会」(地区社協を設けている地域もあり)や「民生委員・児童委員」といった、福祉のキーパーソンが存在しています。加えて、地域に密着した「社会福祉施設」や「ボランティア」など、地域福祉を支える人々もいます。とりわけ、福祉教育に関連しては、県社協が実施している「福祉学習サポーター」講座を受講したサポーターが存在している地域もあり、地域社会の中に福祉教育を応援していく人々がいます。
福祉教育の実践には、実践者に豊かな福祉観が必要です。福祉教育実践の立案を行うには、指導者一人で出来ることではありません。無論、福祉関係者であっても、十分に出来るとは言えないでしょう。だからこそ、地域の多くの人々との協働(共同)による作業で、学習計画の立案から実践、そして評価を進めていくことが重要となります。このプロセスこそが豊かな福祉観を形成していく営みであり、協働による人と人との繋がりは、「福祉」をキーワードとした地域のネットワーク化をもたらします。
よって、学校が行う福祉教育であっても、地域が行う福祉学習であっても、双方が繋がり協力しあうことが必要です。このようにした地域を挙げての福祉教育は、その地域の福祉力の向上をもたらすとともに、ともに生きる社会(=共生社会)の実現が期待されています。